行政だけではできないこと
このページでわかること
- 行政は「公平」「ルールと手続き」「前例重視」「困りごとが見えにくい」という性質から、手が届きにくいことがある
- 市民活動は「一人に寄りそう」「すぐ動ける」「新しいことを試せる」「困りごとに気づける」強みを持つ
- 市民活動が先に動き、うまくいったものを行政があとから支える、という流れがよく起きる
このページでは、行政だけではできないことについて説明するよ。
行政は何でもできる?
市役所って、町のことを全部やってくれるんじゃないの?
市役所は、道路、ゴミの収集、学校、福祉など、本当にたくさんの仕事をしているよ。でも、仕組みの上で、どうしても手が届きにくいことがあるんだ。
これは市役所の人がサボっているという話じゃなくて、行政という仕組みの「性質」の話だよ。主な理由を4つ見てみよう。
理由1 公平でなければならない
行政は、みんなから集めた税金で仕事をしているよね。だから、誰に対しても公平でないといけないんだ。
「この人は特別に」ということがしにくいし、サービスはみんなに同じように届ける必要がある。
公平なのはいいことじゃないの?
もちろん大事なことだよ。でも、困りごとは一人ひとり違うよね。
たとえば、「夜遅くまで親が働いていて、毎晩ひとりでご飯を食べている子」がいたとする。行政が「その子の家にだけ晩ご飯を届ける」のは、公平の点から難しい。でも、その子にとっては今日のご飯が大事なんだ。
理由2 ルールと手続きがある
行政は、法律やルールにもとづいて動くよね。新しいことを始めるには、
- 本当に必要かを調べる
- 予算(お金)をとる
- 議会で認めてもらう
- 実行する
という手順をふむ必要があるんだ。町のお金の計画は1年ごとにつくるから、思いついてから始まるまでに、1年以上かかることもめずらしくないよ。
困ってる人は、1年も待てないよね……。
理由3 前例がないことは始めにくい
行政は失敗したときの責任が重いから、まだ誰もやったことがない新しいことは始めにくいんだ。
「他の市でうまくいっているなら、うちでも」とは考えやすいけど、「誰もやっていないけど、試しにやってみよう」はなかなか難しい。
理由4 困りごとが見えにくい
4つ目は、困っている人が、役所の窓口まで来ないことがあるということだよ。
- 「助けて」と言うのが恥ずかしい
- どこに相談すればいいかわからない
- そもそも自分が困っていることに気づいていない
こういう人の困りごとは、役所からは見えにくいんだ。
2章の民生委員さんは、そういう人に気づく役目だったよね。
その通り。地域の中にいる人のほうが、気づけることがたくさんあるんだ。
そこで市民活動の出番
行政に手が届きにくいところは、誰がやるの?
そこで力を発揮するのが、前のページの「共」、つまり住民や市民活動なんだ。市民活動には、こんな強みがあるよ。
| 行政の苦手 | 市民活動の強み |
|---|---|
| みんなに公平に | 目の前の一人に寄りそえる |
| 手続きに時間がかかる | 気づいたらすぐ動ける |
| 前例がないと始めにくい | 新しいことを小さく試せる |
| 困りごとが見えにくい | 地域の中で、困りごとに気づける |
さっきの「ひとりでご飯を食べる子」の話を思い出してみて。実際に全国で、市民が「その子たちをほうっておけない」と始めたのが子ども食堂なんだ。
市民活動が先に動き、行政があとから支える
おもしろいのは、ここからなんだ。
子ども食堂は、最初は市民が自分たちのお金と時間で始めたものだった。でも、全国に広がって大事さが認められるにつれて、行政が補助金を出したり、場所を貸したりして、支える側に回るようになったんだ。2025年度には、全国で1万2,000か所をこえる子ども食堂があるよ。
市民が始めたことが、行政を動かしたんだ!
そうなんだ。市民活動が新しい困りごとに最初に気づいて、試してみる。うまくいったら、行政がそれを支えたり、仕組みにしたりする。
こういう流れは、子ども食堂だけじゃなく、いろんな分野で起きてきたんだよ。
ポイント
- 行政は「公平」「ルールと手続き」「前例重視」「困りごとが見えにくい」という性質から、手が届きにくいことがある
- 市民活動は「一人に寄りそう」「すぐ動ける」「新しいことを試せる」「困りごとに気づける」強みを持つ
- 市民活動が先に動き、うまくいったものを行政があとから支える、という流れがよく起きる